2011年2月17日木曜日

2011.2.16 北方領土

日本の抗議に対するロシアの反応は面白い。
武力で島を占領し、不当支配を続けている国が「外交的ではない」という台詞を口にしたというのは怒りと言うよりもおかしさがこみ上げてくる話である。
彼らが強硬な態度に出れば出るほど、自らの正当性のなさを裏付けているようなものだ。
まず、北方領土付近に最新鋭の戦力を配備して領土の保全を図るなどと言っていることとか、日本の抗議にすぐ対応して韓国や中国を巻き込んで既成事実を作ろうとしてる点だとか、全く余裕がない。

すでに実行支配している島に対して、例えば力尽くで奪いにくる=戦争、と言う選択肢が日本にないことはロシアも分かっているはずである。 なのにこの余裕のなさはどうだろうか?
これは犯罪者の心理である。 4島支配の正当性を出張しながら、何のことはない自分から主張に無理があることを認めているようなものである。

日本にとって重要なのは焦らず、いつまででも継続して北方領土が固有の領土であり、ロシアが不当に占拠し続けていることを理路整然と訴え続けることである。 領土問題は当事国間の問題であり、国連や国際世論といったものに活路を期待するのは間違いだ。 しかしそれでも言い続けるのである。 ロシアが北方領土を返すか、それともロシアという国が消滅するその日まで、菅さんの孫の代になろうが、その孫の代になろうが、永遠に主張を繰り返すのだ。 

その結果、ロシアとの外交がうまくいかなくなろうが、経済活動が停滞しようがいっこうに気にしてはならない。 同じ領土問題を抱える中国とは少し事情が違う。 尖閣は日本が現状支配しており、今のところ中国も無理矢理に取りには来ない。 アメリカも一応、日米安保の範囲だなどといっている(この点、千島はルーズベルトが勝手にスターリンに売ってしまった経緯があって、事情がまるで違う)。 また中国との関係は、相互に依存し合っている点でも大きい。 歴史認識やら、領土問題でもめても、結局双方ともにいつまでも反目を続けている訳にはいかない。 お互いに行くところまでは行けない関係なのだ。

その点、ロシアはさほど重要な国ではない。 エネルギー開発の分野で大分突っ込んでいる企業はあるが、アメリカや中国などと比べたら、はるかにどうでもいい国だ。 なので全く気にする必要はない。 むしろ、ロシアの代わりに他の近隣諸国との関係を強化していくべきだ。 ロシアが握っている日本の弱み(日本カード)は北方領土しかない。 だからこそ、強気で傍若無人な態度をとり続けているのだ。 北朝鮮が核の保有を材料に、国際社会に対してとってきた瀬戸際外交と性格的に似ている部分がある。 ロシアの過激な反応はむしろ弱者のそれなのだ。

ロシアが過剰に反応すればするほど、軍事的なプレゼンスを強めれば強めるほど、傍目にそれは帝国主義的な臭いをぷんぷんまき散らすことになる。 そうなれば日本にとってはとてもいいことなのだ。 他の国も日本の立場に理解を示すようになるだろうし、ロシアの主張に疑問を感じるようになる。 だから、マスコミもロシアの反応を過敏に伝えて国民の感情やポピュリズムに流される政治家をおかしな方向に導かないで欲しいと思う。

一番まずいのは、今は泰然とした姿勢の政府が、この問題を政争に利用しようとする売国奴たちの思惑にのって、態度を変え、あり得ない妥協をしてしまうことである。 国民も北方領土が自分たちの生きているうちに帰ってくるなどと言う期待はゆめゆめ持つべきではない。 これは経済的な利害の問題ではなくて、あくまで主権の問題であると考えるべきだ。
そうすれば、原理がずれることもないだろう。 千島にはたしてエネルギー資源が眠っているのかどうかは私は知らない。 しかしエネルギー開発などというのは博打みたいなもの。 それがリスクのないものであるなら、すでに石油で潤っているロシアがなぜ単独でやらないのだろうか。 主権でもめている相手国である日本に参入を期待したのも、博打のリスクをシェアする相手がほしいからに違いない。 

漁業資源に関わるところでは、話はもっと簡単だ。 中国を引き入れることにより第三国の利害を日本との領土問題に組み入れてしまおうということだ。 何ともわかりやすいではないか。 ここにもなりふり構わない余裕のなさがみえる。 中国はきっと日本の出方をみていることだろう。 それこそ一貫性の必要なところである。 日本は尖閣の問題を念頭にいれて断固とした態度でこういう動きを牽制するべきである。

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