東京には粉物屋は少ない。お好み焼き屋や、たこ焼き屋は殆ど見かけない。
下町を除いてはもんじゃ焼きすらほとんどない。
とても貴重なのだ。
会社帰り、田町でお好み焼き屋を見つけた。
見たところボロい店だったが、気になっていたので勇気を出して入ってみた。
客は私一人。若いお兄ちゃんが鉄板の向こうにいた。
言葉のアクセントからするとどうやら中華系の人らしい。
わたしが関西出身だと知ると、お好み焼きの本場から来たと思ってなのか、自分からいろいろ話してくれた。
なんでも前のオーナーが店を閉めて1年半ぐらいの時、今年の4月ごろに縁あって引き継いだとのこと。
飲食は他でも経験してきたが粉物は初めて、東京では粉物は難しいとこぼす。
どの辺が難しいの?ときくと、焼くのに時間がかかり過ぎるので、ランチタイムにも客が来てくれないし、夜も居酒屋に流れてしまうという。
なるほど、そうなのかと思っていると、気がつけば目の前には高く盛られたキャベツのみじん切りが。
高さは5cm以上はある。
ん、粉がいやに少ない、こんなんで大丈夫なんか?
こちらの視線に気がついたらしく、「うちは粉少ないんですよ。」と説明してくれる。
それが売りらしい。 でも、、粉やっぱり少なすぎるんじゃ。
悪い予感は的中した。 食べてみると表面はカリッとしてていいのだが、中はやっぱり焼きが甘い。
生っぽい。 それに、キャベツのみじん切りがまとまってなくて、口の中でボソボソする。
うーん、はっきり言って不味いかも。 客が入らんのは、時間がかかるからだけじゃなさそうだ。
ひょっとして広島焼きの作り方を間違って応用したのか?
でも目の前のこれは広島焼きじゃない。
みじん切りにしたことで空気の層がいっぱい出来て火が通りにくくなってるし、生っぽいし。
まとまらずにボソボソやし。
いつのまにか新しい客も二組ほど入ってきたがそれぞれ、とん平焼きとか、キャベツ炒めとかばかり頼んで誰もお好み焼きを頼もうとしない。 ああ、そうか、みんなわかってるんだ。
これは言ってあげたほうが良いのだろうか。
でも柄の悪いおじさんにいちゃもんをつけられたと思われたくもないし。
結局、そんなことを考えながら、なんとか食べ終わって店を出た。ミックスお好み焼き屋1,400円。
東京でお好み焼き屋が少ない理由をもう一つ学んだ。